DM・メール・LINEで誹謗中傷された場合、発信者を特定できる?
令和8(2026)年7月19日
SNSの公開投稿ではなく、XやInstagramのDM、電子メール、LINEなどで、匿名の相手から悪口や脅しを受けた――。このような場合でも、「発信者情報開示請求をすれば相手を特定できる」と考える方は少なくありません。
しかし、公開投稿と一対一のメッセージとでは、利用できる法的手続が異なります。
この記事のポイント
- 一対一のメッセージは原則として開示制度の対象外: 発信者情報開示制度が対象とするのは「不特定の者によって受信されることを目的とする」通信であり、特定の一人だけに送られたDM・メール・LINEメッセージは、通常この要件を満たしません。
- 開示請求ができなくても、取り得る手段はある: 証拠の保存を出発点に、メッセージ内の手掛かりの精査や、犯罪に当たる可能性がある場合の警察への相談などが考えられます。
- 一対一でも法的責任は生じ得る: 内容や反復の程度によっては、名誉感情侵害(侮辱)など民事上の不法行為となり、慰謝料等の支払義務が生じることがあります。
一対一の通信は、発信者情報開示制度の対象外
情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)の発信者情報開示制度は、「特定電気通信」による権利侵害を対象としています。
法律上、特定電気通信とは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」の送信をいいます。したがって、誰でも閲覧できるSNS投稿、掲示板の書込み、動画のコメント欄などは対象になり得ますが、特定の一人だけに送られたDM、メール、LINEメッセージは、この要件を満たしません。
※メンバー限定のグループチャットや会員制コミュニティについては、参加者の範囲、人数、加入方法、転送・拡散の予定などを踏まえて個別に判断されます。「複数人に送られた」というだけで、直ちに開示対象になるわけではありません。
開示請求ができないから、特定が不可能とは限らない
まず重要なのは、証拠の保存です。
メッセージ本文だけでなく、送信者のアカウント名・ID、プロフィール画面、送受信日時、相手のページに至るURL、前後のやり取りを保存してください。電子メールの場合は、本文を転送するだけではなく、「メールヘッダー」や元のメッセージデータを残すことが重要です。
メールヘッダー等から、送信に使われたサーバーやIPアドレスが分かる場合もあります。ただし、現在のウェブメールやSNSでは、利用者の接続元IPアドレスが受信者に表示されないことも多く、受信者自身の調査だけで契約者の氏名・住所まで到達できるとは限りません。また、プラットフォームが本人の求めに応じて登録者情報を任意に開示することも、通常は期待できません。
一方、相手がメッセージ内で示した情報、過去の投稿、使用している画像、他のアカウントとの共通点などから、送信者につながる手掛かりが見つかることもあります。ただし、別人を誤って特定しないよう、慎重な検討が必要です。
犯罪に当たる可能性がある場合は警察への相談も
「殺す」などの脅迫、金銭を要求する恐喝、執拗なつきまとい、性的画像の送信・拡散、業務を妨害する大量メッセージなどは、犯罪に当たる可能性があります。
この場合、警察が捜査上必要と判断すれば、事業者に対する照会や令状による捜査などを通じて、送信者の特定が進むことがあります。警察庁も、問題のある書込みやメッセージについて、内容の記録を残したうえで相談するよう案内しています。
もっとも、警察に相談すれば必ず捜査や特定が行われるわけではありません。危険性、反復性、メッセージの具体性、現実に生じている被害を説明できる資料を準備することが重要です。身の危険が迫っている場合は、安全の確保を優先してください。
一対一の悪口でも法的責任がなくなるわけではない
名誉毀損罪については、「公然と事実を摘示」すること、また、侮辱罪については「公然と人を侮辱」することが要件とされているので、「一対一の通信」による場合はこれらに該当しません。
もっとも、第三者への転送が予定されていた場合や、多数の人にも同じ内容が送られていた場合は、異なる評価となる可能性があります。
また、一対一の通信であっても、表現の内容や反復の程度によっては、名誉感情侵害(侮辱)など民事上の不法行為となり、慰謝料等の支払義務が生じることがあります。
まとめ
DMやメールによる被害では、「公開投稿と同じ方法では開示できない」ことが出発点となります。その上で、媒体、送信範囲、内容、緊急性等をふまえて取るべき手段を検討するということになります。メッセージを保全し、早い段階で弁護士や警察に相談することが重要です。
出典・参照資料
- ・情報流通プラットフォーム対処法(特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律)(e-Gov法令検索)
- ・刑法(e-Gov法令検索)
- ・警察庁「インターネット上の誹謗中傷等への対応」
【免責事項】
本記事の内容は、執筆時点の法令・情報等に基づいた一般的な情報提供を目的とするものであり、
法的アドバイスを提供するものではありません。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
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この記事を書いた弁護士
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弁護士(東京弁護士会・2009年登録)/内幸町国際総合法律事務所 パートナー
インターネット上の投稿に関する発信者情報開示請求、削除請求、損害賠償請求及び意見照会への対応を主に取り扱っています。 従業員・元従業員による投稿や転職クチコミなど、インターネット問題と労働法務が交差する案件にも対応しています。
主な著作(いずれも共著)
- 『事例大系 インターネット関係事件 紛争解決の考え方と実務対応』ぎょうせい・2025年
- 『最新事例でみる 発信者情報開示の可否判断』新日本法規出版・2022年
- 『最新 プロバイダ責任制限法判例集』LABO・2016年
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