弁護士櫻町直樹(内幸町国際総合法律事務所)

インターネット上で誹謗中傷されたときの『証拠保全』とは?


令和7(2025)年6月29日


インターネット上で誹謗中傷の被害に遭ってしまったとき、投稿者に対して法的措置(開示請求・削除請求・損害賠償請求など)を行なうには、誹謗中傷の内容を証明するための「証拠」を適切に保全しておくことが極めて重要です(※削除請求は、サービス管理者/提供者などに対しても行なうことができます)。

投稿はいつ削除されるか分からないため、発見したらすぐに行動に移しましょう。

本記事では、誹謗中傷の証拠を保全しておくための手順を解説いたします。

【基本】まず自分で行うべき証拠保全方法

以下の方法は、法的措置を検討する上で最低限必要となる基本的なものです。できれば複数の方法で記録を残しておきましょう。

1. スクリーンショットの撮影

最も手軽で重要な証拠保全方法です。撮影する際には、以下の情報がすべて一枚の画像に収まるように撮影してください。

  • 対象とする投稿の全文
  • 投稿された日時(「〇分前」などの相対的な表示ではなく、「2025年6月29日 15:30」のように具体的な日時がわかるように)
  • ウェブサイトのURL(アドレスバーがすべて表示されるように)
  • 投稿者名、ユーザーID、アカウント名

ポイント

パソコンで行なうことを推奨:スマートフォンの場合は、URLが全文表示されないことが多いため、パソコンのブラウザでページを開き、画面全体のスクリーンショットを撮るのが確実です。

前後の投稿についても保存しておく:誹謗中傷に至る経緯や、やり取りの全体像がわかるように、該当投稿の前後の投稿も合わせて保存しておくと、悪質性を証明するのに役立ちます。

相手のプロフィール画面も保存しておく:投稿者を特定して損害賠償請求などをした際に、「複数でアカウントを運営しており、その投稿は自分ではない」などという反論がなされることがあります。そのような場合に、対象アカウントのプロフィール欄に「個人が単独で運営していること」を伺わせる記載があれば、相手方からの反論を否定することができる場合があります。のスクリーンショットも忘れずに撮影しておきましょう。

2. ウェブページをPDF形式で保存

スクリーンショットと合わせて、ウェブページ全体をPDFファイルとして保存することも有効です。PDF化すると、多くの場合、URLや保存日時が自動的にヘッダーやフッターに記録されるため、証拠としての信頼性が高まります。

PDF保存方法の例(Google Chromeの場合)

  1. 証拠となるページで右クリックし、「印刷」を選択します。
  2. 送信先(プリンター)の一覧から「PDFとして保存」を選択し、保存します。

3. 動画での撮影

長文の投稿でスクロールが必要な場合や、ライブ配信中のコメントなど、静止画では全体像を捉えきれない場合は、画面を録画(キャプチャ)する方法が有効です。

【応用】証拠の信頼性をさらに高める方法

ご自身での保全に加えて、より客観性があり、法的手続きにおいて「改ざんされていない」ことを強力に証明する方法もあります。

タイムスタンプサービスの利用

第三者機関である時刻認証局が付与する「タイムスタンプ」を利用する方法です。電子データにタイムスタンプを付与することで、「その時刻にその内容の電子データが存在したこと」と「その時刻以降、データが改ざんされていないこと」を証明できます。

これは非常に証拠能力が高く、弁護士に依頼した際や、裁判になった際に、相手方から「証拠が加工・編集されたものではないか」という反論を防ぐのに極めて有効です。民間企業が提供する有料のサービスなどがあります。

証拠保全の際に最も重要な4つのポイント

  • 網羅性:誰が、いつ、どの場所(URL)で、どんな内容を投稿したか、全ての情報が欠けることなく記録されていることが重要です。
  • 客観性:自身のスクリーンショットだけでなく、PDF保存やタイムスタンプの利用など、第三者が見ても客観的に事実とわかる形で保存することが望ましいです。
  • 迅速性:投稿はいつ削除されるかわかりません。証拠保全は時間との勝負です。
  • 非加工:撮影したスクリーンショットや保存したデータは、一切加工・編集せずにそのままの状態で保存してください。少しでも加工すると、証拠としての価値が損なわれる可能性があります。

証拠を保全したら

証拠の保全が完了したら、一人で抱え込まず、なるべく早く専門家へ相談することをお勧めします。まずは、ご自身で保全した証拠に不備がないか確認してもらいましょう。

【免責事項】
本記事の内容は、執筆時点の法令・情報等に基づいた一般的な情報提供を目的とするものであり、法的アドバイスを提供するものではありません。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。

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