大規模特定電気通信役務提供者とは?
削除・手続き透明化等の義務について解説
令和7(2025)年12月3日
SNSや動画共有サイト、掲示板サービスなど、いわゆる「プラットフォーム」は私たちの日常生活に深く入り込んでいます。
その一方で、誹謗中傷やプライバシー侵害、著作権侵害などのトラブルも後を絶ちません。こうした状況を踏まえ、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(いわゆるプロバイダ責任制限法)が「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(情報流通プラットフォーム対処法)へと改正され、大規模なプラットフォーム事業者に対して、削除手続の整備や透明化など、より重い義務を課す仕組みが導入されました。
本記事では、この制度の概要と、利用者にとってのメリット等について解説します。
1 「大規模特定電気通信役務提供者」とは?
法律上の呼び名は少し難しい印象を与えますが、簡単に言えば「日本で非常に多くの人が使っている、投稿型・交流型の巨大プラットフォーム事業者」のことです。
1-1 対象となるサービスのイメージ
対象になりうるのは、具体的には以下のようなサービスです。
- SNS(投稿・コメント・リプライなど、ユーザー同士が交流する場)
- 動画共有サイト(コメント機能・投稿機能があるもの)
- オンライン掲示板・口コミサイト など
逆に、ネットバンキングや業務用クラウドサービスのように「不特定多数のユーザーの交流が主目的でないサービス」や、おまけとしてチャット機能がついているだけのサービスは、基本的に対象外とされています。
つまり、「みんなが書き込みし合うこと自体が主目的」の巨大サービスを対象にした制度だとイメージしていただくと分かりやすいでしょう。
1-2 「大規模」かどうかの判断基準(人数のハードル)
どのサービスが「大規模」に当たるかは、利用者数をベースに判断されます。特に重視されるのは、次の二つの指標です。
① 平均月間発信者数
過去1年間の平均で、「1か月の間に実際に投稿・発信をした人(ユニーク)」の人数が1,000万を超えるかどうか
② 平均月間延べ発信者数
過去1年間の平均で、「1か月の間に発信者となった人の延べ人数」が200万を超えるかどうか
これらはいわゆる「アクティブ投稿ユーザー」の規模を見る指標です。一定規模に近づくと総務大臣への報告が義務付けられ、その情報などを踏まえて「大規模特定電気通信役務」としての指定が検討されます。
2 指定されたら何をしなければならないのか?
「大規模特定電気通信役務提供者」に指定されたプラットフォーム事業者には、主に次のような義務が課されます。一般利用者に関係の深いポイントに絞って解説します。
主な義務のポイント
-
事業者・代表者情報の届出・変更届出
会社情報や代表者、連絡先、削除基準の公表方法などを総務大臣に届け出る必要があります。海外事業者であっても、日本国内の代表者を必ず置かなければなりません。 -
被害申出窓口の整備と公表(被侵害者向け)
「日本語で」「オンラインで」「過度な負担なく」申し出ができる窓口を整備し、公表する義務があります。また、申出を受け付けたことが分かる仕組み(受付完了メールなど)も必要です。 -
被害申出を受けた後の調査義務
申出があった場合、権利侵害の有無について遅滞なく調査を行う義務があります。 -
専門家(侵害情報調査専門員)の選任
名誉毀損や著作権侵害などの専門的な判断を行うため、法律や実務に精通した「侵害情報調査専門員」を選任する必要があります。 -
被害申出に対する結果通知(目安:14日)
申出を受けてから原則として14日以内に、削除等の措置を講じたかどうか、講じなかった場合はその理由を通知しなければなりません。調査に時間がかかる場合は、その旨を通知する必要があります。 -
削除等の「基準」を作って公表する義務
どのような情報を、どういう理由・手続で削除するのかという「基準」を作成し、日本語で分かりやすく公表する義務があります。 -
発信者への通知(削除理由の通知)
投稿を削除した場合、原則として発信者に対し、その事実と理由(どの基準に基づいたか)を通知する義務があります。これにより「なぜ消されたのか分からない」という事態を防ぎます。 -
年に1回の「透明性レポート」の公表
被害申出の件数、削除件数、アカウント停止数、AIによる自動削除の状況などをまとめたレポートを毎年公表し、社会に対して「見える化」を行う必要があります。 -
総務大臣による監督
義務違反がある場合、総務大臣は報告徴収、勧告、命令といった行政上の措置を行うことができます。
3 利用者にとってどんな意味があるのか?
3-1 被害者側(権利を侵害された人)にとって
日本語対応やオンライン窓口が法律で保証されるため、泣き寝入りするリスクが減ります。また、申出後に「おおむね2週間」という目安で結果や状況の通知が来るため、いつまでも放置される不安が解消されやすくなります。
3-2 発信者側(投稿した人)にとって
自分の投稿が削除された場合、「なぜ削除されたのか」の理由通知を受け取れるようになります。また、事前に公表された基準や透明性レポートを見ることで、どのような投稿が削除対象になるかを予測しやすくなります。
表現の自由の観点からも、プラットフォームによる恣意的な削除を防ぎ、運用の透明性を高める効果が期待されています。
3-3 社会全体から見て
巨大プラットフォームは今や社会インフラです。「被害者の迅速な救済」と「表現の自由の保障」、そして「AI時代における説明責任」のバランスを取るために、大規模事業者に対してより重い責任を課すのが本制度の狙いです。
4 おわりに
本記事では、「大規模特定電気通信役務提供者」という概念と、その義務の中身について解説しました。
記事のまとめ
- 対象は日本で多くの人が利用する巨大プラットフォーム
- 被害申出の窓口整備・迅速な調査・通知が義務化
- 削除基準や運用実態(透明性レポート)の公開が必須
- 違反時には総務大臣による勧告・命令が可能
個別のケースで実際にどのような申出が可能か、どのような証拠が必要かは事案ごとに異なります。お困りの際は、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。
【免責事項】
本記事の内容は、執筆時点の法令・情報等に基づいた一般的な情報提供を目的とするものであり、
法的アドバイスを提供するものではありません。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
この記事は参考になりましたか?