最低賃金が全国平均1,177円に|令和8年度の答申と決まるまでの流れ
令和8(2026)年9月21日
令和8(2026)年9月3日、厚生労働省は、全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されたと発表しました。 改定後の額を全国で加重平均すると1,177円となり、昨年度の1,121円から56円の引上げです。 [1]
地域別最低賃金は、都道府県ごとに定められる賃金の下限額です。 正社員・パート・アルバイトを問わず、その地域で働く人に適用され、使用者はこれを下回る賃金を支払うことができません。 [2]
もっとも、9月3日に決まったのは「答申」までです。 実際に効力が生じるのは10月以降で、その日も都道府県によって違います。 今年の数字と、決まるまでの手順を見ていきます。
この記事のポイント
- 全国加重平均は1,177円: 昨年度から56円の引上げで、昭和53(1978)年度に目安制度が始まって以降、2番目に大きな引上げ幅です。
- 33府県が国の目安を上回った: 国の目安額はAランク54円、B・Cランク56円でしたが、47都道府県のうち33府県がこれを1円から9円上回る額を答申しました。
- 発効日には10月1日から12月2日まで幅がある: 答申は決定の前段階で、異議申出の手続を経て労働局長が決定・公示します。新しい額がいつから効くかは地域ごとに異なります。
最低賃金額が決まるまでの流れ
最低賃金法は、地域別最低賃金を、その地域の「労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力」の三つを考慮して定めると規定しています。 生計費の考慮にあたっては、生活保護との整合性に配慮するものともされています。 [3]
毎年の改定は、厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が「目安」を示すところから始まります。 令和8年度の目安は令和8(2026)年7月28日に答申され、都道府県をA〜Cの3ランクに分けたうえで、 Aランク(6都府県)54円、Bランク(28道府県)56円、Cランク(13県)56円とされました。 [4]
この目安を参考に、各都道府県の地方最低賃金審議会が地域の実情を踏まえて調査審議し、労働局長に答申します。 9月3日の発表は、47件の答申が出そろったという意味です。
ただし、答申がそのまま効力を持つわけではありません。 労働局長は審議会の意見の要旨を公示し、その地域の労働者・使用者は、公示の日から15日以内に異議を申し出ることができます。 [5] この手続を経て労働局長が改定を決定し、決定した事項を公示します。 改定は公示の日から起算して30日を経過した日から効力を生じますが、決定の中でそれより後の日を定めることもできます。 [6] 発効日が都道府県ごとに違うのは、この「別に定める日」によるものです。
令和8年度の答申の内容
引上げ額は54円から65円の幅に分かれました。 最も多いのは56円の11道県で、57円が7県、59円が5県と続き、引き上げ額が最も大きかったのは65円の佐賀県です。 [7]
目安額をそのまま採ったのは14都道府県にとどまり、残る33府県は目安を1円から9円上回りました。 上乗せが最も大きかったのは佐賀県の9円で、鹿児島県の8円、高知県と沖縄県の7円が続きます。
地域差はどこまで縮まったか
改定後の最高額は東京都の1,280円、最低額は宮崎県の1,085円で、その差は195円です。 昨年度は東京都1,226円と高知県1,023円で差が203円でしたから、8円縮まった計算です。 最高額に対する最低額の比率は84.8%となり、12年連続の改善です。
もっとも、改定後の額が1,100円に届かない県も18県あります。 最高額との間になお200円近い開きが残っている点は、あわせて押さえておきたいところです。
いつから適用されるか
発効予定日は、37都道府県が10月中(うち15都道府県が10月1日)、7府県が11月中、岩手県と熊本県が12月1日、沖縄県が12月2日です。 昨年度は11月以降にずれ込む地域が多かったと報じられており、今年は10月に戻る動きが目立ったことになります。 [8]
ただし、これらは予定であり、公示後の異議の申出の状況等により変更される可能性があるとされています。 適用額と発効日は都道府県の労働局の公表で確かめられます。
新しい額の発効後、賃金がその額を下回っている場合、労働契約のうち最低賃金額に達しない部分は無効となり、最低賃金と同じ定めをしたものとみなされます。 つまり、使用者には差額の支払義務が生じます。
まとめ
令和8年度の地域別最低賃金は、全国加重平均1,177円、引上げ額56円で答申が出そろいました。 大きな引上げですが、これは国の示した目安に33府県が上乗せした結果であり、発効日も10月1日から12月2日まで幅があります。
適用される額がいくらで、いつから効力が発生するのかは、都道府県ごとに確かめる必要があります。 10月以降の給与明細を受け取る前に、一度見ておくとよいのではないでしょうか。
文末注
- 厚生労働省 「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」 (令和8〈2026〉年9月3日報道発表)。 改定額の全国加重平均額、昨年度からの引上げ額、 56円の引上げが目安制度開始以降2番目の高さであること、 及び最高額に対する最低額の比率について参照。 報道発表を見る ↩
- 最低賃金法(昭和34年法律第137号)4条1項・2項、40条。 使用者が最低賃金額以上の賃金を支払う義務、 最低賃金額に達しない賃金を定めた部分が無効となり最低賃金と同様の定めをしたものとみなされること、 及び違反に対する罰則について参照。 e-Gov法令検索を見る ↩
- 最低賃金法9条1項から3項まで。 地域別最低賃金を定める際の考慮要素と、生活保護に係る施策との整合性への配慮について参照。 e-Gov法令検索を見る ↩
- 厚生労働省 「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」 (令和8〈2026〉年7月28日報道発表)。 A〜Cのランク区分と各ランクの目安額について参照。 報道発表を見る ↩
- 最低賃金法10条1項、11条1項・2項。 最低賃金審議会の調査審議を経て地域別最低賃金を決定すること、 並びに意見の要旨の公示及び公示の日から15日以内の異議申出について参照。 e-Gov法令検索を見る ↩
- 最低賃金法14条1項・2項。 決定した事項の公示と、公示の日から起算して30日を経過した日 (決定において別に定める日があるときはその日)から効力を生じることについて参照。 e-Gov法令検索を見る ↩
- 厚生労働省 「(別紙)令和8年度地域別最低賃金額答申状況」。 都道府県ごとのランク・目安額・改定後の額・引上げ額・目安との差額及び発効予定日について参照。 本文中の都道府県数、金額の分布、地域差の数値は、同表の数値から算出したものです。 資料を見る ↩
- 時事通信 「最低賃金、全国平均1177円 56円引き上げ、33府県で目安超え」 (2026年9月3日配信)。 昨年度は発効日が11月以降にずれ込む地域が多かったとの報道について参照。 資料を見る ↩
【免責事項】
本記事の内容は、執筆時点の法令・情報等に基づいた一般的な情報提供を目的とするものであり、
法的アドバイスを提供するものではありません。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
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