弁護士 櫻町直樹(内幸町国際総合法律事務所)

「定期縛りなし」のはずが…巧妙化する定期購入トラブル──取り消せるのはどんなときか

令和8(2026)年7月18日


令和8(2026)年4月28日、国民生活センターが、通信販売の「定期購入」に関するトラブルへの注意喚起を公表しました。相談は依然として多く、しかも手口が巧妙化していると指摘されています。

「1回限り」「お試し」のつもりで注文したはずが、実は解約するまで商品が届き続ける定期購入だった、というのが典型例です。近年は、注文の途中に「さらにお得なご案内」を差し込み、意図しない別商品の定期購入へ誘導する事例も報告されています。

この記事では、こうしたトラブルにどんな法律の規制が及ぶのか、そして申込みを取り消せるのはどのような場合かを整理します。

この記事のポイント

  • 申込み画面には表示義務があります:通信販売の申込み最終画面などには、金額・分量・解約条件を表示することが法律で義務づけられています(特定商取引法12条の6)。
  • 誤認させられた申込みは取り消せる場合があります:販売業者が法定事項を表示しなかったり、不実の表示や誤認させる表示を行ったため、消費者が契約内容などを誤認し、その誤認に基づいて申し込んだ場合には、申込みの意思表示を取り消せることがあります(同法15条の4)。
  • ただし自動的に取り消せるわけではありません:表示が適切にされていた場合など、取消しが認められないケースもあり、個別の事情によって結論は変わります。

いま何が起きているのか

国民生活センターが紹介する相談事例には、次のようなものがあります。

一つは、「1回限り」と思って申し込んだ化粧クリームが定期購入だった事例です。

もう一つは、注文後の追加購入画面により、別の洗顔クリームの定期購入まで申し込んだことになった事例です。

これらの事例では、定期購入であることや、別商品の定期購入が追加されることを消費者が十分に認識しないまま申込みに至っている点が問題となっています。「定期縛りなし」「回数縛りなし」という表示は、1回限りの購入を意味するとは限りません。最低購入回数の指定はないものの、解約しない限り商品が届き続ける定期購入であり、次回発送日の一定日前までに所定の方法で解約手続をする必要がある場合があります。

法律はどう規制しているか

こうした「詐欺的な定期購入商法」への対策として、令和3(2021)年に特定商取引法(特商法。訪問販売や通信販売などのルールを定めた法律)が改正され、令和4(2022)年6月1日から施行されています。

まず、通信販売の最終確認画面等には、商品の数量・回数・期間等の分量、販売価格・対価、支払時期・方法、引渡し・提供時期、申込みの撤回・解除に関する事項、申込期間に期限がある場合にはその期限等を表示することが義務づけられています(特商法12条の6第1項)。これは定期購入に限らず、1回限りの契約でも対象になります。

あわせて、申込みそのものや契約内容について、人を誤認させるような表示も禁止されました(同条2項)。


そのうえで、これらの規定に違反する表示によって消費者が誤認して申し込んだ場合には、その申込みの意思表示を取り消すことができるとされています(同法15条の4)。また、申込みの撤回や契約の解除を妨げる目的で、契約に関する事項や、顧客が契約を必要とする事情について事実と異なることを告げる行為も禁止されています(同法13条の2)。

ただし、これらの規定があるからといって、思っていた契約と違えば必ず取り消せる、というわけではありません。契約内容が最終確認画面に明瞭かつ分かりやすく表示され、画面全体として消費者を誤認させるものでもなかった場合には、単なる見落としを理由とする取消しが認められないことがあります。


反対に、条件が画面のどこかに記載されているだけで、直ちに適切な表示と評価されるわけではありません。実際に取り消せるかは、画面の表示内容や申込みの経緯など、個別の事情に応じた検討が必要です。

なお、通信販売には、訪問販売のような一般的なクーリング・オフ制度はありません。商品の返品については、返品条件が適切に表示されている場合には、原則としてその条件に従うことになります。一方、商品などについて返品条件の表示がない場合には、商品を受け取った日から8日以内であれば、消費者が返送料を負担して契約を解除できる場合があります(特商法15条の3)。

また、定期購入の将来分を解約できるか、誤認による申込みを取り消せるかは、それぞれ解約条件や同法15条の4の要件に照らして判断されます。

トラブルに遭わないために・遭ってしまったら

国民生活センターは、申込み前の確認と、記録の保存を呼びかけています。

注文の前に、販売サイトや「最終確認画面」で、定期購入になっていないか、最低購入回数の縛りがないか、2回目以降の代金や解約の条件を確認することが第一歩です。広告の文言だけで判断せず、申込みが完了する直前の画面まで目を通すことが勧められています。

そして、契約条件に関する記載は、最終確認画面を含めてスクリーンショットで保存しておくと、後に「表示がなかった」「誤認させられた」と主張する際の材料になります。注文後に届いた事業者からのメールも残しておくとよいでしょう。

解約したいのに事業者と連絡がつかない、条件がよく分からないといった場合には、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。

まとめ

通信販売の申込み画面には、金額や解約条件を表示する義務があり、これに反する誤認によって申し込んでしまった場合には、申込みを取り消せる可能性があります。まずは申込み前に最終確認画面をよく確認し、条件をスクリーンショットで残しておくことが、後々の備えになります。

もっとも、取り消せるかどうかは表示の具体的な内容や申込みの経緯によって変わり、一律に決まるものではありません。判断に迷う場合は、消費生活センターなどの窓口に相談することが考えられます。

出典・参照資料

【免責事項】
本記事の内容は、執筆時点の法令・情報等に基づいた一般的な情報提供を目的とするものであり、 法的アドバイスを提供するものではありません。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。

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