改正郵政民営化法が成立──民営化前の郵便貯金は「権利消滅」に注意
令和8(2026)年7月12日
令和8(2026)年6月19日、参議院本会議において「郵政民営化法等の一部を改正する法律」が可決・成立し、同年6月25日に公布されました(令和8年法律第50号)。郵便局ネットワークの維持のために国が年650億円規模の交付金を投入することなどを柱とする、平成24(2012)年以来14年ぶりの本格的な改正です。
この改正で特に注目したいのが、交付金の財源の一つに「権利が消滅した旧郵便貯金」が充てられる点です。民営化前に預けられた定額郵便貯金などは、一定期間放置すると払い戻しの権利そのものが消滅する仕組みになっています。
改正の内容とあわせて、私たちが今のうちに確認しておきたい注意点を解説します。
この記事のポイント
- 交付金制度の創設: 郵便局ネットワークの維持・活用のため、日本郵便への新たな交付金制度が設けられました。年650億円規模を令和9(2027)年度から投入すると報じられています。
- 財源に「消滅した旧郵便貯金」: 交付金の財源には、政府が保有する日本郵政株式の配当を減額した額に相当する拠出金に加え、払い戻されないまま権利が消滅した旧郵便貯金の一部が充てられます。
- 今の貯金がなくなるわけではない点に注意: 権利消滅の対象は、平成19(2007)年9月30日以前に預けられた定額・定期・積立郵便貯金です。ゆうちょ銀行の通常貯金や民営化後の貯金が没収されるものではありません。
改正の背景
平成19(2007)年10月の郵政民営化から、まもなく20年になります。この間、郵便物の減少などで郵便事業の採算は悪化し、全国約2万4,000の郵便局網の維持が課題となっていました。
そこで今回の改正では、郵政三事業(郵便・貯金・保険)のユニバーサルサービス(全国どこでも受けられる基礎的サービス)の確保と、郵便局を通じた地域住民の生活支援が目的に掲げられました。
改正の主な内容
1. 郵便局ネットワーク維持のための交付金
郵便局ネットワークの維持・活用を支援するため、新たな交付金を日本郵便に交付する制度が創設されました。財源は、政府保有の日本郵政株式の配当を減額した額に相当する拠出金と、権利消滅した旧郵便貯金の一部です。
2. 金融2社の株式の保有義務
日本郵政に対し、ゆうちょ銀行とかんぽ生命(金融2社)の株式について、当分の間、3分の1超の保有が義務付けられました。従来の「できる限り早期に処分する」という完全民営化の方針は、大きく修正されたことになります。
3. 公共サービスの受託を「本来業務」に
自治体の事務の受託などの「基盤的サービス提供業務」が、他の本来業務の遂行に支障のない範囲で行う日本郵便の本来業務に追加されました。住民票の発行など、郵便局が行政サービスの窓口としての役割を担う場面が増えると考えられます。
改正法は、一部の規定を除き、公布の日から起算して6か月を超えない範囲内で政令で定める日から施行されます。
注意点:民営化前の郵便貯金は「権利消滅」の対象
今回の改正で交付金の財源とされた「権利が消滅した郵便貯金」とは、次のような仕組みによるものです。
郵政民営化前、すなわち平成19(2007)年9月30日以前に預け入れられた定額郵便貯金・定期郵便貯金・積立郵便貯金は、満期日の翌日から20年間払い戻し等の取扱いがないと、「権利消滅のご案内(催告書)」が送付されます。その送付日から2か月を経過しても払い戻されないときは、貯金を払い戻す権利そのものが消滅します(旧郵便貯金法第29条)。
民営化後のゆうちょ銀行や一般の銀行の預金は、長期間取引がなくても「休眠預金」となるだけで、手続をすれば払い戻しを受けられます。これに対し、民営化前の郵便貯金は権利が法律上消滅してしまう点が大きく異なります。
権利が消滅した貯金の残高は、令和7(2025)年3月時点で約3,200億円にのぼると報じられています。催告書は届出住所に送られるため、転居などで本人に届かないケースも多いと指摘されています。
私たちの生活への影響──今できること
心当たりのある方は、古い郵便貯金が残っていないか、早めの確認をおすすめします。通帳や証書が見つからなくても、本人確認書類があればゆうちょ銀行の窓口で現存調査を依頼できます。亡くなった家族名義の貯金も、戸籍謄本等により調査が可能です。
対象となるのは平成19(2007)年9月30日以前に預けた定額・定期・積立郵便貯金であり、すでにすべて満期を迎えています。帰省の機会などに、ご家族の分もあわせて確認しておくとよいでしょう。
まとめ
今回の改正は、郵便局網を国の支援で維持する方向への転換であり、私たちの生活にも関わる内容です。もっとも、株式保有義務等は3年ごとの検証の際に見直され、公布後2年を目途に組織の在り方等も検討されるなど、制度は今後も動く可能性があります。
当面の実践的なポイントは、民営化前の郵便貯金を放置しないことです。権利消滅の仕組み自体は今回新設されたものではありませんが、これを機に、ご自身やご家族の古い貯金を一度確認してみてはいかがでしょうか。
出典・参照資料
- ・郵政民営化法等の一部を改正する法律(令和8(2026)年6月25日公布・令和8年法律第50号。第221回国会 衆法第13号、総務委員長提出、令和8(2026)年6月19日成立)
- ・衆議院/参議院ウェブサイト「議案審議経過情報」
- ・総務省「郵便貯金の権利消滅に関するお知らせ」
- ・毎日新聞(令和8(2026)年6月19日配信)、プレジデントオンライン(令和8(2026)年7月配信)ほか各種報道
【免責事項】
本記事の内容は、執筆時点の法令・情報等に基づいた一般的な情報提供を目的とするものであり、
法的アドバイスを提供するものではありません。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
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